2026-08-31
「最近、土地が高くなった気がする」
不動産の仕事をしていると、お客様からこの言葉を聞く機会が本当に増えました。
実際、感覚だけの話ではありません。
国土交通省が公表した2026年(令和8年)の地価公示では、全国の「全用途平均」「住宅地」「商業地」がいずれも5年連続で上昇しています。特に三大都市圏では、上昇幅がさらに拡大しました。
では、なぜここ5年で土地の価格はこれほど変わったのでしょうか。
今回は、統計の数字だけでは見えてこない「不動産屋の目線」から、土地価格が上昇してきた背景を考えてみたいと思います。
2021年頃といえば、新型コロナウイルスの影響がまだ強く残っていた時期です。
当時は「不動産価格も下がるのでは?」という声もありました。
ところが、実際の地価はその後、上昇基調へ。
2022年、2023年、2024年、2025年、そして2026年と、全国平均では上昇が続いています。
国土交通省の2026年地価公示では、全国約26,000地点を対象に調査が行われています。
つまり、この5年間は、
「コロナだから不動産価格が下がる」
という単純な流れにはならず、むしろその後の経済・社会環境の変化によって土地価格が押し上げられた5年間だったと言えます。
不動産の価格を考えるとき、非常にシンプルな原則があります。
それは、
欲しい人が多く、売り物が少なければ価格は上がる
ということです。
土地は工場で大量生産できません。
駅から徒歩10分、南道路、整形地、周辺環境も良好――。
こうした条件の土地は、どれだけ需要があっても簡単には増えません。
不動産会社の現場でも、「条件の良い土地がなかなか出てこない」という状況は珍しくありません。
特に人気エリアでは、売却物件が出ると複数の購入希望者が検討するケースもあります。
その結果、
「少し高くても買いたい」
という人が現れ、土地価格が上がっていく。
これが地価上昇の基本的な構造です。
ここ5年で大きく変わったものの一つが「建築費」です。
住宅を建てる場合、土地代だけを考えるわけにはいきません。
土地を購入して、建物を建てる。
この「建物」の価格が上昇すると、住宅全体の購入予算にも影響します。
一方で、住宅購入者の予算には限界があります。
そこで、
「建物にこれだけかかるなら、土地はこの価格まで」
という土地と建物の予算配分が重要になります。
不動産会社の立場からすると、土地価格だけを見ていても本当の市場は見えてきません。
土地価格+建築費
この2つをセットで考える必要があります。
この5年間で、住宅に対する考え方も変わりました。
テレワークの普及などによって一時期は「郊外でもいい」という動きが注目されました。
しかし、現在の市場を見ると、利便性の高い場所には根強い需要があります。
駅へのアクセス。
買い物の便利さ。
病院や学校への距離。
将来売却するときの売りやすさ。
こうした条件を総合的に考える人が増えています。
特に土地を購入するときには、
「安い土地」よりも「価値が落ちにくい土地」
を探すことが重要になっています。
同じエリアでも、駅からの距離や道路条件、土地の形、周辺環境によって価格に大きな差が出るのは、そのためです。
ここは、不動産屋として特にお伝えしたいポイントです。
「全国的に地価が上がっている」
と聞くと、
「じゃあ、自分の住んでいる地域の土地も全部上がっているの?」
と思われるかもしれません。
しかし、実際にはそう単純ではありません。
国土交通省の2026年地価公示でも、地域や用途によって動きには差があります。地方圏でも5年連続で上昇していますが、地方四市とその他の地域では上昇幅にも違いがあります。
つまり、
「日本の地価が上がっている」=「すべての土地が上がっている」
ではありません。
むしろ現在は、土地の「選別」が進んでいると考えたほうが分かりやすいでしょう。
人が集まる場所。
生活利便性が高い場所。
交通アクセスが良い場所。
再開発など将来性がある場所。
こうした土地には需要が集まりやすい。
一方で、需要が減少している地域では、地価上昇の恩恵を受けにくい場合もあります。
土地を購入するとき、
「今、この土地はいくらなのか?」
という視点はもちろん大切です。
しかし、不動産会社としてはもう一つ、
「10年後、この土地を欲しいと思う人がいるか?」
という視点も重要だと考えています。
例えば、
・駅から近い
・生活に必要な施設が揃っている
・道路条件が良い
・土地の形が使いやすい
・周辺に住宅需要がある
こうした土地は、将来的にも購入希望者が見つかりやすい可能性があります。
逆に、現在は安く購入できても、将来的に買い手が少なくなる土地であれば、価格だけでは判断できません。
土地は「安ければいい」という商品ではないのです。
最近よく聞くのが、
「土地が高くなったので、もう少し待ったほうがいいですか?」
という質問です。
これは非常に難しい問題です。
確かに、今後地価が下がる可能性がゼロとは言えません。
一方で、建築費や人件費などのコスト上昇もあり、単純に「待てば土地が安くなる」とも言い切れません。
国土交通省の2026年地価公示でも、全国の地価は5年連続の上昇となっています。
だからこそ、
「価格が下がるかどうか」だけで判断するのではなく、「自分にとって買うべき土地なのか」を考える
ことが大切です。
では、これから土地を購入するなら、どんなところを見ればいいのでしょうか。
私なら、まず次のポイントを確認します。
特に重要なのは、**「広告に載っている価格だけで判断しない」**ことです。
土地には一つ一つ個性があります。
同じ町内でも、道路一本違うだけで価格が変わることがあります。
同じ面積でも、土地の形や接道条件によって使いやすさが変わります。
だからこそ、実際の取引事例や周辺環境まで確認することが大切です。
国土交通省の「不動産情報ライブラリ」では、地価公示だけでなく不動産取引価格などの情報も確認できます。取引価格は土地の面積や道路条件など個別要因によって変わるため、周辺事例を見る際にも注意が必要です。
ここ5年の地価上昇を振り返ると、単純に「土地が高くなった」というだけではありません。
土地を取り巻く環境そのものが変化しました。
建築費。
人件費。
金利。
人口動態。
住宅需要。
駅周辺の再開発。
生活スタイル。
さまざまな要素が絡み合って、現在の土地価格が形成されています。
だからこそ、不動産を購入するときには、
「昔はいくらだったか」
だけを見るのではなく、
「なぜ今この価格なのか」
を考えることが重要です。
この5年間、日本の地価は大きな変化を経験しました。
そして2026年現在、全国平均では5年連続の上昇となっています。
ただし、これからもすべての土地が同じように上昇するとは限りません。
これからの不動産市場では、
「どこの土地でも買えば値上がりする」時代ではなく、「選ばれる土地と、そうでない土地の差が広がる」時代
になっていく可能性があります。
土地を買うときに大切なのは、「今より安く買えるか」だけではありません。
その土地にどんな需要があるのか。
10年後、20年後にも住みたい人がいるのか。
そして、もし売却することになったときに買いたい人がいるのか。
不動産会社としては、目先の価格だけではなく、こうした「土地の価値」を一緒に考えることが大切だと思っています。
「土地が高くなったから買わない」のではなく、「高くても買う価値がある土地なのか」を見極める。
これからの土地探しでは、この視点がますます重要になってくるのではないでしょうか。
※上記は全国の地価動向をベースにした記事です。国交省の地価公示は毎年1月1日時点の標準地を調査したものなので、実際の売買価格とは一致しません。
